くるり元奏者ファンファンの脱退真相と現在!名盤に刻んだ足跡
ファン ファン くるりという特異なアンサンブルに、今なお鮮烈な記憶を呼び覚まされるリスナーは少なくない。京都を拠点に先鋭的なサウンドを鳴らし続けてきたロックバンドに、トランペット奏者のファンファンが正式加入したのは2011年のこと。彼女が吹き込む柔らかなブラスの音色は、バンドの骨格そのものを鮮やかに塗り替えた。
メンバーチェンジを重ねながら進化を遂げてきたグループの軌跡において、変幻自在のアンサンブルを極めたファン ファン くるりの共闘関係は、邦楽ロックの文脈に深い爪痕を残した。なぜ彼女はバンドを去る道を選び、現在どのような音を鳴らしているのか。当時の証言と最新の動向から、その真実に迫る。
脱退の真相を追う:10年間の航海と訪れた転換期

2021年、音楽シーンに走った激震。ファンファンがくるりを離れるという公式発表は、多くのファンに驚きと一抹の寂しさをもたらした。加入から丸10年という節目での決断。そこには、音楽的な対立や不協和音といった安直なドラマは存在しない。
大きな契機となったのは、結婚と出産という人生の転換点だった。過酷なツアーやスタジオワークが日常となるバンド生活と、家庭環境の変化。岸田繁と佐藤征史は彼女の生活環境を最大限に配慮し、一時期は活動休止期間を設けながら柔軟なバンド運営を模索していた。だが、彼女自身が音楽家として、そして一人の人間として出した結論は「バンドからの離脱」だった。
「くるりの一員であること」への責任感の強さゆえに、中途半端な関わり方を良しとしなかった彼女の美学。岸田と佐藤がその意思を深く尊重し、温かく送り出した背景には、単なるビジネスパートナーを超えた確固たる信頼関係があった。
『坩堝の電圧』から『THE PIER』へ:異彩を放ったブラス革命

SPEEDSTAR RECORDSおよびビクターエンタテインメントからリリースされた在籍時の諸作は、今聴いても異様な熱量を放っている。とりわけ2012年のアルバム『坩堝の電圧』と2014年の『THE PIER』は、日本のオルタナティヴ・ロック史に燦然と輝く金字塔だ。
『坩堝の電圧』では、泥臭いガレージロックから壮大なオーケストレーションまでが混沌と渦巻く中、彼女のトランペットが楽曲を貫く一条の光として機能した。さらに多国籍音楽の要素を貪欲に呑み込んだ『THE PIER』において、その存在感はピークに達する。
「Liberty & Gravity」をはじめとする複雑怪奇なリズム隊の上で、軽やかに跳ね回るファンファンのホーンアレンジ。岸田繁の緻密なスコアリングと、佐藤征史の揺るぎないベースライン。そこに彼女の天性のグルーヴが融合することで、くるりはそれまで誰も到達したことのない無国籍ポップスの極致へと辿り着いた。
京都音楽博覧会で見せた絆とライブの記憶

ファンファンがバンドにもたらしたのは、スタジオワークの革新だけではない。秋の京都・梅小路公園で毎年開催される「京都音楽博覧会」のステージにおいて、彼女が放つオープンなオーラは、くるりのライブ空間を決定的に開放的なものへと変えた。
芝生の上に広がる青空の下、彼女がトランペットを構えて一吹きするだけで、会場の空気がふっと緩み、幸福な祝祭感に包まれる。フロントマンである岸田の隣で、時折いたずらっぽく笑いながら音を重ねる姿は、多くのオーディエンスの記憶に焼き付いている。
彼女の脱退によってバンドは再び岸田と佐藤の2人体制へと戻ったが、京都音博のステージに刻まれたあの多幸感あふれる光景は、バンドの歴史における最も美しいハイライトのひとつとして語り継がれている。
サブスク時代に再評価されるファンファンの音色
ストリーミングサービスが音楽聴取の主軸となった現在、彼女の残した音源は新たな世代リスナーによって再発見されている。Spotify、Apple Music、YouTube Musicといったプラットフォーム上の公式プレイリストを通じて、国内外の若いリスナーが彼女の参加作へとアクセスしているのだ。
日本の音楽産業が世界的なシティポップやジャパニーズ・インディーの再評価の波に乗る中、ファンファン在籍期の楽曲群が持つハイブリッドな質感は、国境を越えて極めて現代的な響きとして受け止められている。
アルゴリズムによって掘り起こされる「琥珀色の街、上海蟹の朝」や「魔法のじゅうたん」の生演奏テイク。そこには、タイムレスな管楽器のダイナミクスが確かに息づいている。
ソロ活動と新たな表現:静かに進化する音楽の現在地
バンドを離れた後も、彼女の音楽的探求が止まったわけではない。現在は関西を生活の拠点に据えながら、自身のペースを守りつつ表現活動を継続している。
他アーティストのレコーディングへの客演や、小規模なアコースティックセッション、さらには地域に根ざしたワークショップなど、その活動形態は極めてオーガニックだ。巨大な商業音楽のサイクルから一歩距離を置き、生活の手触りを感じさせる音を紡ぎ出すスタイルは、表現者としての新たな円熟を感じさせる。
かつてスタジアム級のフェスを沸かせたトランペッターは今、等身大の表現者として心地よい音の居場所を見出している。そのしなやかな足取りは、表現と暮らしの調和を模索する現代のすべてのクリエイターにとって、ひとつの確かな道標となっている。 (出典: ファン ファン くるり(Yahoo!ニュース))