即完売が続く砥部焼の旗手、森陶房の新作が食卓を変える理由
森 陶 房の工房に足を踏み入れると、張り詰めた静けさの中に湿った白土と素焼きの香りが漂っていた。愛媛県伊予郡砥部町。四国山脈の裾野に広がるこの静かな陶郷で、今、全国の器愛好家や若年層の食卓を虜にするものづくりが熱気を帯びている。棚に並ぶのは、白磁の硬質な美しさと人肌のような温もりを兼ね備えた器たちだ。
ぽってりとした厚手の磁器に藍色の染付という伝統的な砥部焼の枠組みを大切に守りつつ、現代の洋食や日常の家庭料理が驚くほど引き立つ意匠を提案する森 陶 房の器は、入荷のたびに一瞬で姿を消す。大量生産の工業製品にはない手跡のゆらぎと、洗練された造形美。なぜこれほどまでに人を惹きつけるのか。轆轤(ろくろ)が回る工房の奥へと足を運んだ。
祖父の志から受け継がれた有限会社森陶房の原点

愛媛県伊予郡砥部町で約250年の歴史を刻む砥部焼。頑丈で割れにくく、大衆の日常食器として愛されてきたこの地で、有限会社森陶房は確固たる歩みを続けてきた。創業の礎を築いたのは、名工として知られた森元青林氏だ。土と真摯に向き合い、用の美を追求したその精神は、時代が移り変わっても工房の芯として脈々と息づいている。
陶磁器製造業を取り巻く環境は決して平坦ではない。生活様式の変化や安価な輸入食器の台頭により、全国の伝統工芸産地が苦境に立たされる中、同工房は伝統の技術を硬直化させず、しなやかに進化させてきた。受け継がれてきたのは単なる技法ではなく、「使う人の暮らしを楽しくする」という愚直なまでのクラフトマンシップだ。
森光太郎と森香織の感性が響き合う、手仕事の新たな景色

現在の工房を牽引するのは、森光太郎氏と森香織氏の二人だ。光太郎氏が生み出すのは、端正でありながら土の力強さと手の温もりが同居するフォルム。一方、香織氏が描く絵付けは、草花や愛らしい動物、リズミカルな幾何学模様など、見る人の心をふっと緩ませる優しさに満ちている。
二人の個性が重なり合うことで、砥部焼の持ち味である重厚な白磁に、軽やかな現代の空気が吹き込まれる。「磁器の強さと陶器のような柔らかさ。そのちょうど真ん中にある心地よさを届けたい」と光太郎氏は語る。削り出された高台の処理ひとつ、釉薬のわずかなムラひとつにも、使い手への細やかな配慮が宿っている。
2026年最新コレクション公開:現代の食卓を彩る器と即完売の秘密

待望の2026年最新コレクションが、遂に工房でベールを脱いだ。今回の新作群は、現代の多様な食の風景に寄り添うフラットプレートや、深みのあるニュアンスカラーを取り入れた鉢ものなど、これまでの枠を一段と押し広げる意欲作が揃う。朝のトーストから夕暮れのパスタ、和の煮物まで、どんな料理も受け止める懐の深さがある。
発売と同時に即完売が続く人気の秘密はどこにあるのか。独占取材で明らかになったのは、徹底した「使いやすさへの試行錯誤」だ。手に取った瞬間の重量バランス、スタッキングした際の収まりの良さ、カトラリーが当たったときの柔らかな感触。細部までミリ単位で計算し尽くされているからこそ、一度使うと手放せなくなる。ファン待望の限定入荷は公式オンラインや提携ギャラリーにて順次展開される予定だが、今回も早期の品薄が予想されるため、告知のタイミングを見逃さない構えが必要だ。
土と対話し枠を超える「QUIET HOUSE」の実験的精神
森陶房の挑戦は、砥部焼という産地の枠組みだけに留まらない。備前焼の産地である岡山県の若手作家らと協働するプロジェクト「QUIET HOUSE」への参画は、その象徴的な試みだ。異なる土、異なる焼成方法、異なる歴史を持つ伝統工芸同士がぶつかり合い、対話を重ねることで、まったく新しい質感のテーブルウェアが誕生している。
無釉の焼き締めが持つ原始的な土の質感と、砥部で培われた洗練された造形感覚の融合。産地の垣根を軽やかに飛び越えるこのアプローチは、旧来の伝統工芸の固定観念を揺さぶり、感度の高いインテリア愛好家や料理人からも熱い視線を集めている。
砥部焼まつりから楽天市場まで、過熱する需要とものづくりの矜持
春と秋に開催され、全国から数十万人ものファンが詰めかける「砥部焼まつり」。砥部焼協同組合に加盟する数多くの窯元が軒を連ねる中でも、森陶房のブース前には早朝から長蛇の列ができる。お目当ての器を手に入れようと遠方から足を運ぶ来場者の姿は、いまや風物詩となった。
実店舗だけでなく、楽天市場などの主要ECモールやセレクトショップでも取り扱いが始まるとアクセスが集中する。日本経済新聞などのメディアでも、地方の伝統産地から全国的なヒットを生み出すビジネスモデルやクラフトの革新事例として取り上げられる機会が増えた。だが、需要がどれほど過熱しようとも、工房の姿勢は揺らがない。機械によるオートメーション化には頼らず、職人の手作業による丁寧な仕上げを頑なに守り続けている。
日常に寄り添う美術品として、次の世代へつなぐものづくり
食器棚にしまい込む美術品ではなく、毎日の食卓で使われてこそ器は輝く。朝の淹れたてコーヒーを注ぐマグカップ、夕餉の温かいスープをよそうボウル。森陶房が目指すのは、日々の何気ない食事の時間を、少しだけ特別なものへと変える道具のあり方だ。
土をこね、形を削り、火を入れる。気の遠くなるような手仕事の積み重ねから生まれる器は、使い手の暮らしに寄り添いながら、年月を経てさらに味わいを深めていく。砥部の風土に抱かれながら進化を続けるそのものづくりは、日本の手仕事が持つ無限の可能性を力強く物語っている。 (出典: 森 陶 房(Yahoo!ニュース))