息を呑む金工美。竹俣勇壱の匙とジュエリーが人を惹きつける理由
竹俣 勇 壱の手から放たれる金属器には、静寂と張り詰めた気品が同居する。食卓に置かれた一本のフォーク、あるいは耳元を飾る小さなジュエリー。手に取った瞬間、指先に伝わるかすかな凹凸とひやりとした重みが、日常の輪郭を鮮やかに研ぎ澄ます。金沢の町並みに漂う陰影と、研ぎ澄まされた刃物のような美意識。それらが重なり合い、唯一無二の表情を宿す。
骨董を思わせる古色と現代の構築的なフォルム。その狭間で作家としての竹俣 勇 壱が紡ぎ出す金工の世界は、日本国内にとどまらず海を越えて熱狂的な支持を集めている。なぜ彼のカトラリーや装身具は、これほどまでに人を魅了してやまないのか。単なる日用品の枠組みを軽々と超え、現代の美意識を揺さぶる創作の真髄に迫った。
彫金の出自から生まれたジュエリーデザインと緻密な造形

彼の原点は、精密な手技が求められる彫金とジュエリーデザインにある。1995年頃から本格的に金属工芸の道を歩み始めた彼は、ダイヤモンドやゴールドといった貴金属を扱い、ミリ単位以下の精度で美を構築する修練を積んだ。この初期のキャリアこそが、後に生み出されるカトラリーの繊細なディテールを決定づけている。
多くのテーブルウェア作家が鍛冶や鋳造からアプローチするのに対し、竹俣勇壱の視線はどこまでも微細だ。金属の角をどのように落とし、光をどう乱反射させるか。装飾品を仕立てる研ぎ澄まされた感覚が、一本のスプーンの柄やフォークの刃先にそのまま注ぎ込まれている。
猿山修との協業が生んだ「ryozen」カトラリーの革新性

竹俣の仕事を語る上で欠かせないのが、デザイナー・猿山修との協働である。二人の対話から生まれたシリーズ「ryozen」は、金工作品とプロダクトデザインの境界を鮮やかに塗り替えた。
工業製品としてのステンレススチールを用いながら、表面に手作業で施される特殊な加工。これにより、量産品が持つ冷徹さは消え去り、何十年も使い込まれたヨーロッパのアンティークシルバーのような深い陰影が立ち現れる。日常で気兼ねなく扱える堅牢さを備えつつ、食卓の空気を一変させる造形美。「用の美」を追求する両者の美意識が、このカトラリーシリーズには凝縮されている。
金沢市で美意識を体感する拠点「KiKU」と「sayuu」

北陸新幹線の延伸を経てさらなる文化の発信地となった金沢市。この地で竹俣は、自身の美学を空間全体で表現する二つの拠点を展開してきた。アトリエ兼ショップである「KiKU」と、美酒や茶を嗜むサロン空間「sayuu」である。
「KiKU」に並ぶのは、彼自身が手がけたジュエリーやカトラリー、そして審美眼によって選び抜かれた古道具や工芸品だ。一方、「sayuu」では、空間、器、そして流れる時間そのものがひとつの作品として調和する。金属という冷たい素材を温もりある生活空間へと昇華させる試みは、金沢という街の歴史と響き合いながら深化を続けている。
伝統工芸・現代工芸の境界を溶かす独自の質感表現
加賀百万石の城下町として知られる金沢には、重厚な伝統工芸が根付く。しかし竹俣のアプローチは、伝統の踏襲とも、奇をてらった現代アートとも一線を画す。伝統工芸・現代工芸という既存の枠組みを軽やかに越境していく姿勢がそこにある。
金属の表面を酸化させ、ヤスリをかけ、叩き締める。偶然と必然の間で生まれるテクスチャーは、まるで地中から掘り出された出土品のような佇まいを見せる。新品でありながら記憶を内包しているかのような質感。このエイジングの妙こそが、使い手の感性に深く刺さる理由だ。
【独自取材】入手困難な作品の全貌と最新の取扱店・展覧会情報
現在、竹俣勇壱の作品は全国のギャラリーやセレクトショップで入荷待ちが続く。特にステンレスカトラリーのシリーズや真鍮の茶匙、限定制作されるシルバーのジュエリーは、オンライン販売が数分で完売することも珍しくない。
作品を手に入れるための鍵となるのは、全国各地の厳選された取扱ギャラリーでの企画展スケジュールをいち早く把握することだ。東京、京都、福岡などの主要セレクトショップで開催される個展では、通常ラインナップに加えて一点ものの限定作が並ぶ貴重な機会となる。また、金沢の「KiKU」への事前アポイントメントや、取扱店が告知する抽選販売の動向を追うことが確実な入手への近道といえる。作り手の息遣いが伝わる本物を手に入れるには、日頃の情報収集が欠かせない。
Instagramで広がる熱狂と世界が共鳴するクラフトの未来
日々の食卓を切り取った写真が国境を越えて共有される時代、Instagram上でも彼のカトラリーは特別な存在感を放っている。料理人やフードスタイリスト、器愛好家たちがこぞって愛用し、その使用風景が静かな熱狂を生み出している。
大量生産と消費が加速する世の中だからこそ、金属という無機質な素材に命を吹き込む手仕事の価値が際立つ。古びることなく、使うほどに手に馴染み、味わいを増していく竹俣勇壱の作品。その金属の肌合いは、これからの時代の暮らしに真の豊かさを問いかけ続けている。 (出典: 竹俣 勇 壱(Yahoo!ニュース))